第 2 回 今週の提言 (2026 年 1 月 20 日号)
- yuzhashicbridges08
- 1月20日
- 読了時間: 3分
「自社株はいくらですか?」と聞かれて、答えられますか
―― “わからない”ことが、最大の経営リスクになる
「社長、ご自身の会社の株価はいくらか、ご存じですか?」
これは、私がこれまで何百人もの経営者に投げかけてきた質問です。
すると、多くの社長が一瞬言葉に詰まり、こう答えます。
「税理士には任せています」「評価は出ていますが、正直よくわかりません」
決して珍しい反応ではありません。
しかし、私はこのやり取りのたびに、強い危機感を覚えます。
なぜなら――
自社株の価値を理解していない状態は、経営判断のハンドルを握っていないのと同じ
だからです。
自社株の評価には、実は複数の「顔」があります。
代表的なものだけでも、
・相続や贈与で使われる「税務評価」
・会社の収益力や将来性を反映した「実態価値」
・M&A 市場で第三者が判断する「取引価値」
これらは、目的が違えば、数字も大きく変わります。
にもかかわらず、「評価は一つ」「専門家が出した数字が正解」と思い込んでしまう社長が
非常に多いのです。
ここに、大きな落とし穴があります。
たとえば――
税務評価だけを見て「このくらいの価値だろう」と判断した結果、
本来なら成長投資や M&A、資本提携に使えたはずの選択肢を、自ら捨ててしまう。
あるいは逆に、実態以上に高い価値があると誤解し、承継計画が進まず、
時間だけが過ぎていく。
どちらも、**“わからないまま進んだ結果”**です。
重要なのは、正確な評価額を暗記することではありません。
社長自身が、
・この数字は「何の目的」で算定されたのか
・前提条件は何か
・評価が変わると、どんな選択肢が広がるのか(あるいは狭まるのか)
こうした構造を理解しているかどうかです。
事業承継は、相続対策でも、手続きでもありません。
会社の未来をどう描くかという、極めて戦略的な経営判断です。
その出発点となる自社株の価値が「ブラックボックス」のままでは、
次の一手を打てるはずがありません。
私は、専門家を否定しているわけではありません。
むしろ、優秀な専門家ほど、「社長が理解すること」を重視します。
理解した社長こそが、最終判断を下し、会社を前に進められるからです。
まずは、こう自問してみてください。
・自社株の評価は、どの前提で算定されているのか
・その評価は、将来の成長戦略とつながっているか
・もし承継や M&A を考えた場合、判断材料として十分か
答えに詰まるなら、今が「考え始めるべきタイミング」です。
事業承継は、準備の早さで選択肢の数が決まります。
そして、その第一歩はいつも――
社長自身が「自社の価値を知ろうとすること」から始まります。
次回は、「事業承継=引退準備」という思い込みが、なぜ会社の成長を止めてしまうのか。 その構造を、もう一段踏み込んでお話しします。


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